
「わたしの図書室」では10月15日(木)からの3週にわたり、大河小説「人生劇場」で知られる尾崎士郎の短編「落葉と蝋燭」を紹介する。宇野千代との電撃的な出会いから結婚、そして破局。人生の波瀾を越えた尾崎士郎は、隣家から琵琶の音が聞こえる一軒のあばら家で、新たな妻と心穏やかに暮らし始めた…。朗読は日本テレビアナウンサーの井田由美。
【愛と憎~尾崎士郎と宇野千代】
尾崎士郎は、1898年(明治31年)、愛知県に生まれた。青春時代は、早稲田大学に進み、社会主義運動にのめりこむ。やんちゃで雄弁家。「人生劇場」の主人公・青成瓢吉は、尾崎自身がモデルだと言われている。
大正10年、23歳のときに時事新報の懸賞小説で「獄中より」が第二席に入賞し、小説家としての道を歩み始める。このとき一席に選ばれたのは、宇野千代だった。その後、尾崎と千代は、ほとんど初対面で意気投合して一気に同棲にまで発展する。二人は後に正式に結婚。大正末期から昭和にかけての数年を共に暮らす。尾崎はのちに、随筆「小説四十六年」の中で、「私に文学眼をひらいてくれたものは宇野千代女史であった」と書いている。
しかし、そんな夫婦生活もやがて破綻をきたす。原因は、宇野千代が梶井基次郎(「檸檬」の作家)と親密になり、世間の注目するところとなったこと。千代と決別し、新たな妻をめとった尾崎士郎は、1933年(昭和8年)、「人生劇場」の一作目「青春編」を発表。この作品は川端康成にも絶賛され、尾崎は押しも押されもせぬ人気作家の座を占めることになった。
【「落葉と蝋燭」はこんな話】
主人公は33歳の小説家・椎名源六。落葉が沈む小さい川に沿った古い借家で、妻と暮らし始めて半年。隣には、家主で薩摩琵琶の宗家だという玉仙こと小森鯤太郎が、亡き妻を思いながらひとりで住んでいた。初めて訪ねて行った日、源六が所望すると、玉仙は琵琶を奏ではじめる。その撥さばきの気迫は、源六の胸にも迫るものがあった。
あるとき、玉仙の弟子・上島佐一が源六の家を訪れる。上島は多くの弟子が去った今も、孤独な師・玉仙に仕えていた。彼は、郷里の先輩だという五十がらみの男にぜひ会ってほしいと言ってきた。さて、この珍客の用件は? 琵琶の音の流れる静かな生活に、なにやら小さな波が立ち始めていた……。
【放送内容】
放送日: 10月15日・22日・29日 木曜日 23:30~00:00
朗読作品: 尾崎士郎「落葉と蝋燭」
朗読: 井田由美(日本テレビアナウンサー)
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