
「わたしの図書室」では11月5日(木)と12日(木)の2週にわたり、坂口安吾の「紫大納言」を紹介する。みやびな一方みだらでもある京の都を舞台にした物語。無類の女好きでイヤらしい紫大納言が真の恋にもだえ、悪漢らの餌食になりながらも純愛を貫こうとするさまを、声優界のレジェンド・羽佐間道夫がひとり芝居で大熱演! さて、血みどろになった大納言は恋を全うできるのか?
【とんでもないゲス男の恋物語】
京の都。ぶよぶよと太った中年男の紫大納言は、夜な夜な女の元に通う無類の好色漢だ。そんな大納言がある夏の夜、道端で一本の小さな笛を拾った。そこへ現れた美しい天女。その笛は自分が仕える月の姫の寵愛の品で、笛を取り戻せなければ自分は再び天上に住むことはできないと言う。しかし、大納言は「五日だけ自分とともにいれば笛を返す」と、ムリヤリ天女を家に連れていってしまう。すくみ、ふるえる天女に大納言の官能の火は燃える。大納言はほんとうに恋をしてしまったのだ。大納言は考えた。いっそこの笛を捨ててしまえば、天女を永遠に我がものにできるのではないか? するとその時、大納言の行く手をふさいだ者がある。それは、近ごろ都を荒らしまわっている大盗賊の一味。あろうことか、大納言は、大切な月の国の笛を、無道の盗賊どもに差し出してしまうのだった……。
【坂口安吾と京都】
1937年の1月から翌年にかけての1年4か月、坂口安吾は京都に暮らした。表向きには初の長編小説を完成させるため。だが実は、女流作家・矢田津世子との破局、恩人の牧野信一の自殺というダブルパンチを受け、どうにもやりきれない気持ちで京都へ向かったものと思われる。このときの京都滞在は、「古都」という作品に詳細に描かれている。作家仲間や個性豊かな市井の人々との日常は、まるでドタバタ喜劇。囲碁クラブまで作って楽しそうにやっていた。一方で、安吾は原稿用紙700枚を超す長編「吹雪物語」を書き上げた。今回、紹介する「紫大納言」は京都に長期滞在した約2年後に書かれたもの。雅さとふしだらさ、哀しさとおかしさが同居する不思議な世界は、安吾の京都での日々を映し出しているのかもしれない。
【放送内容】
放送日: 11月5日・12日 木曜日23:30~0:00
朗読作品: 坂口安吾「紫大納言」
朗読: 羽佐間道夫(声優)
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